ロールシャッハテストとは②―実際の検査とよくある誤解―

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はじめに

①では、ロールシャッハテストの歴史(ヘルマン・ロールシャッハによる開発から、包括システムによる標準化まで)と、心理検査全体の中での位置づけ(投影法という技法の特徴)についてお話ししました。②では、実際の検査の流れとよくある誤解について解説します。

検査の仕組みと実施の流れ

ロールシャッハテストは、決まった手続きに沿って実施され、得られた反応が体系化された基準に従って一つひとつ数値化・記号化されます。そのうえで、どのタイプの反応がどのくらいの比率で出現したかという量的なパターンと、反応の内容そのものから読み取れる質的なパターンの両方を分析することで、思考の柔軟性、感情の調整、対人関係の持ち方、ストレスへの対処傾向、自己や他者に対する捉え方といった幅広い心理的特徴を推測していきます。単に「何に見えたか」という内容だけでなく、「どのように見たか」などのプロセスそのものが重要な手がかりになります。

検査全体(実施から採点・解釈まで)にかかる時間は、1時間以内で終わることもあれば数時間単位でかかることも珍しくなく、決して「絵を見て一言二言答えたら終わり」という簡単な検査ではないということだけ、まずお伝えしておきます。そのため結果解釈・分析には一定の時間がかかるのが一般的です。

よくある誤解を正す

誤解1 「占い」や「当てもの」ではない。

「インクの染みを見て何かを言い当てる」という表面的な形式からタロットや心理テストクイズのような「当たる/当たらない」の遊びと混同されがちですが、これは正確ではありません。ロールシャッハテストは、標準化された実施手順、明確な採点基準、大規模な標準データとの比較という実証的な手続きに基づく心理検査です。もちろん後述するように科学的な限界や論争もありますが、少なくとも占いとは性質がまったく異なるものです。

誤解2 ネットの「インクの染み診断」で自己分析はできない。

インターネット上には、ロールシャッハ風のインクの染み画像を見せて簡易的な「性格診断」を行うコンテンツが存在しますが、これらは臨床で使われる正式なロールシャッハテストとは別物です。正式な検査は、訓練を受けた検査者による対面での実施と体系だった採点・解釈があって初めて意味を持ちます。一枚の画像だけを見て自分で「私は◯◯なタイプだ」と判断できるようなものではありません。また、正式な図版の画像が仮にインターネット上に出回っていたとしても、事前にその図版を見た経験があると、本番の検査での反応が変化してしまい、検査としての妥当性が損なわれる可能性があります。これは、視力検査の前に検査表を暗記してしまうと正確な視力が測れなくなるのと似ています。臨床心理士・公認心理師が図版そのものや具体的な採点基準を一般に公開しないのは、秘密主義というよりも検査の有効性を将来にわたって保つための職業倫理上の配慮です。

誤解3 一回の検査だけで「人格のすべて」がわかるわけではない。

ロールシャッハ・テストは、その人のものの見方や思考・感情の傾向について豊かな情報を与えてくれますが、万能の「人間丸わかり装置」ではありません。前述の通り、他の検査や面接、生活歴の情報などと組み合わせることでより臨床的に厚みのある解釈が可能になります。

誤解4 検査者に「良い答え」「悪い答え」があるわけではない。

受検される方の中には、「変わった答えをしたら異常だと思われるのでは」と不安を感じる方もいらっしゃいますが、そもそも正解・不正解を採点する試験ではありません。検査者が知りたいのは、その方らしい物の見方や感じ方であって特定の答えを引き出そうとしているわけではありません。緊張して身構えるよりも、自然に見えたものを答えていただく方がかえって有意義な結果につながります。

→ロールシャッハ・テストとは③―科学的妥当性・臨床での使われ方・よくあるご質問ー

カウンセリングルームいちご(江戸川区葛西駅徒歩3分)

北村哲也(公認心理師・臨床心理士)

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