知能検査(WAIS)とは①

知能検査とは、個人の知的能力を測るための検査であり、物事の理解力、推理力、知識量、作業能力など様々な認知機能を測定することができます。

2種類のIQ(興味のない人は飛ばしてください。)

IQには大きく分けて2種類のIQがあります。

  • 比率IQ
  • 偏差IQ

です。

比率IQ

現在の精神年齢と実年齢によって、知能指数を出すIQのことです。心理検査としては田中ビネーや鈴木ビネー、新版K式発達検査があります。こちらは専門用語で比率IQと言います。

偏差IQ

当ルームでも準備しているウェクスラー式知能検査は同じ年齢層に属する集団の中でどの位置になるかを数値化したものです。心理検査としては、幼児用のWIPPSI、児童用のWISC、成人用WAISがこれにに該当します。知能検査ではありませんが、児童の認知機能を測定する発達検査であるDNCASやK-ABCはこのIQとなります。

日常生活でいうと、高校や大学受験の時に偏差値がでましたが、それと同じ構造のものです。こちらは専門用語で偏差IQと言います。

比率IQと偏差IQの違い(具体例)

いずれの検査も100が平均となっているので、誤解されますが、意味が違います。

田中ビネーにおける比率IQ=130は、実年齢10歳の時に13歳児級の知能指数であることを意味します。

一方ウェクスラー知式能検査における偏差Q=130は、実年齢10歳に属する集団の中で上位約2.5%であることを意味します。

比率IQを『昔のIQ』、偏差IQを『新しいIQ』と説明しているものもあります。「古いか新しい」「どちらが正しいIQか」ではなく、何を測定しているかの違いです。

ウェクスラー知能検査

ウェクスラー式知能検査は幼児用のWPPSI、児童用のWISC、成人用のWAISの3種類があります。それぞれの知能検査は改訂されており、時代に即したIQを測定できるように研究が続けられています。当ルームで所有しているのは、WAIS-Ⅳであるため、これ以降の説明はWAIS-Ⅳの説明をいたします。

WAIS-Ⅳ(Wechler Adult Intelligence Scale Fourth Edition)

WAIS-ⅣはWechler Adult Intelligence Scale Fourth Edition:ウェクスラー成人知能検査第4版)の略で、アメリカでは1997年、日本では、2006年に改訂された第4版です。この検査は10~15種類の検査(下位検査)を実施し、全般的な知能と4指標を合成得点を算出できます。世界的にも多く利用されており、多くの国で翻訳、標準化されている検査です。

平均100で、標準偏差は15であり、85~115の間に全体の約70%、70~130の間に全体の約95%の人が入ります。

対象年齢

16歳~90歳

合成得点

合成得点とは、実施した下位検査から算出される得点であり、全体を表す全体性IQと4指標の合成得点があります。

全体性IQ

全体的な知能を表す数値です。

言語理解指標

本検査の特徴である4つの認知領域の一つです。言葉の理解力、説明力、思考力、語彙力など、コミュニケーションをしたり、言語的な推論や説明したりするときに使うと考えられています。

知覚推理指標

本検査の特徴である4つの認知領域の一つです。非言語的な認知能力を測定するもので、推理力、視空間認知的な情報を認知、把握、理解し、視覚と運動を統合する能力を測定する指標です。

ワーキングメモリー指標

本検査の特徴である4つの認知領域の一つです。聴覚的な情報を一時的に記憶として保持し、作業する能力を測定する指標です

処理速度指標

本検査の特徴である4つの認知領域の一つです。比較的単純な視覚情報を素早く正確に取り込み、順に処理、識別する能力を測定する指標です。素早くても正確でないとし指標としての得点は低下します。

まとめ

今回、IQ検査及びWAISについて説明しました。WAISは4指標を使って個人間・個人内差の比較をして、その人の得意不得意を分析できるところが一番の特徴となります。

次回はWAISの検査結果の利用法について説明したいと思います。

参考文献

日本版WAIS-Ⅳ刊行委員会(2018) 日本版WAIS-Ⅳ理論・解釈マニュアル 日本文化科学社

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