心理カウンセリング(心理検査)を受ける際、紹介状(情報提供書)をお願いする理由

見ていただく前に

 今回、医療機関をメインに書いておりますが、他の専門職や支援者をないがしろにしたいわけではありません。医療・福祉サービスの貴賤はないものと思っておりますがわかりやすくするために医療機関を中心に書いております。ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

心理療法という用語を使う理由(興味のない人は読み飛ばして下さい)

 今回、他の記事で『心理カウンセリング』と書いているところを「心理療法」と書いています。専門的に言うと、自分自身のやっていることはあくまで治療の一環と思っています。カウンセリングは問題解決のサポートという考え方に対して、心理療法は標的となる症状や状態、問題の解決、改善を目的とするものであり、医療モデルに近い考え方です。

 このような違いがあるものの、多くの人にとって「心理カウンセリング≒心理療法」だと思うので、通常の記事では心理療法とは記載しませんが、相談機関からの情報を提供してもらうためには、専門的に使い分ける必要があると思っています。そのため、今回の記事に限り心理療法と記載して記事を書かせていただきます。

紹介状が必要な二つの側面

 臨床的な側面と法律的な側面です。

臨床的な側面はこれまでの臨床経験の中で医療関係の勤務(病院勤務)が多かったことによる私自身の考えによります。

法律的な側面は、公認心理師は国家資格であるため、法律的な縛りがあります。その観点からのものです。

臨床的な側面

 臨床的には、以下の3つがあります。

  • 当ルームのサービスが治療・支援の妨げをしたくない。
  • 心理検査や心理療法を受けることを医師や支援者に伝えてほしい。
  • クライエント自身だけでなく、他の治療者や支援者にも情報共有して欲しい。

それでは一つ一つ説明させていただきます。

当ルームのサービスが治療・支援の妨げをしたくない

 心理検査や心理療法(心理カウンセリング)は、病状によっては悪化したりする可能性があり、タイミングが大事です。そのことで本来、皆さんが持っている力を十分に発揮できなくなる可能性があります。

また、心理療法の進行によっては一時的な状態悪化をする場合があります。良くなるための状態悪化ですが、もし主治医が心理療法を受けていることを知らないと、肯定的な意味の状態悪化が起きているとは考えずに薬の増量になってしまう場合があります。それは医療機関にとっても、クライエント(相談者)にとっても不利益になります。

心理検査や心理療法を受けることを医師や支援者に伝えてほしい

 おそらく、医療機関受診中の方が心理検査の必要性や心理療法を希望する場合には、主治医からの薬物療法や精神療法だけでは足りない部分を感じているのではないでしょうか。そのため、そのことを主治医や支援者と共有することでより望んでいる治療へつなげる機会となってほしいと思います。

クライエント自身だけでなく、他の治療者や支援者にも情報共有して欲しい

 もしかしたらこれは私の専門職としての思いかもしれません。心理検査の多くは1時間以上かかります。テストバッテリー(複数の検査を実施すること)をすること、1日で終わらないことも多く、クライエントにとって負担が高いと思います。心理検査はご本人が自分の状態を理解できるためにやるものです。もし可能なら医師やクライエントの支援者にも情報共有をしてクライエント自身にとってもサポートする支援者への負担の軽減をはかれたらと思います。そのことがクライエント自身への支援者のサポート体制の強化につながると思います。

 少し話が脱線しますが、この考え方は下手なことをやると、『小さな親切大きなお世話』になります。不要だと思う方に無理に押し付けようとしているわけではありませんので、言って頂ければと思います。なお、専門職用報告書を作成する場合には必ず本人に同意を受けた上で作成します。

法律的な側面

公認心理師は2015年に公布された公認心理師法に基いた国家資格です。そのため、その法律に従った行動をする義務があります。

その公認心理師法には連携についても規定があり、それは第42条に規定されています。

公認心理師法第42条

第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

私の解釈

この条項は①多職種連携が義務付けられていること、②主治の医師の指示を受ける必要があることが明記されています。そのため、情報提供書を頂く行為自体がこの二つに該当する行為だと私自身は理解しています。

まとめ

 紹介状をお願いしたい理由を臨床的側面及び法律的側面からまとめてみました。

 医師が作成する診療情報提供書も他の専門職や機関が作成する情報提供書の作成にもそれを依頼するクライエントの皆さんにもご負担をかけることにはなるとは思いますが、安全かつ安心を担保する意味でも大切なため、ご理解を程よろしくお願いいたします。

 当ルームのサービスが有害なものだけはしたくないと強く思うカウンセリングルームいちごでした。

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