テストバッテリーとは
1人の人に対して、複数の心理検査をすることを言います。
テストバッテリーをする理由
WAISのように単独で心理検査をしても十分な情報が得られますが、複数の心理検査を組み合わせる方がより多くの情報が得られるためです。どの検査も理解できる範囲は限られているため、複数の検査をすることで多角的視点で分析することができます。
テストバッテリーを体重で考えてみると…
体重の60キロは太っていますか?痩せていますか?
結論は人によって違うと思います。これはどうしてでしょうか?
理由は性別でもイメージが違います。同性でも身長の高さで変わります。同じ女性でも身長150センチの人と身長180センチの人では全く違いますよね。
詳細に見てみると、骨密度や体脂肪率という考え方もあります。
つまりその人が太っているかどうかを考えるためには、様々な情報を検討する必要があります。日常生活で考える時には身長及び体重、体重計にある体脂肪率だけで充分ですが、より精密に確認するなら同じ体脂肪率を計測するのであっても体重計のように気軽に測定できるものでなく、正確な数値が出る機器が必要となるでしょう。
何に対して、どこまで正確な情報が必要なのかということが目的によって異なります。
テストバッテリーの例
それでは、心理検査のテストバッテリーの例を示したいと思います。同じ対人関係の問題でも発達障害と対人恐怖で例を示したいと思います。
例①発達障害編(WAIS、AQ、PARSを例にとって)
主訴
対人関係を周りの人とうまく築けないから自分は発達障害ではないか。
内容
発達検査・知能検査であるWAISは現在の知的水準や認知機能特性がわかります。客観的な情報であり有用です。しかし、受けている本人が自分のことについてどう理解しているのかは不明です。そのため、ご自身のことをどのように理解しているかを知るために、自己報告式の発達障害傾向をみるAQを実施することで本人の理解がわかります。
この二つを実施すれば、現在のクライエント(相談者)の状況がわかりますが、過去のことや周りから見た状況がわかりません。そのために、養育者から半構造化面接で聴取するPARSを実施すると過去のことがわかります。
この聴取によって自覚症状と他覚症状の違いによって対人関係のうまくいかなさの理解につなげられる可能性もあります。
本当に発達障害の傾向か考えるためには、現在の発達障害傾向の確認及び客観的な認知機能と過去の生育歴の聴取によってその傾向があるか確認していきます。「知能検査とは」でも説明しましたが、WAISだけではわかりません。そのあたりについて知りたい方は「知能検査とは③」を確認ください。
例②対人恐怖編(LSAS-J、SCT、ロールシャッハテストを例にとって)
主訴
人前で緊張してしまい、うまく話せない。
内容
自己報告式のLSAS-Jをすることで、対人恐怖の重症度を測定できます。ある程度意識的なレベルで確認するなら、未完成の文章を完成させるSCTやコミュニケーションパターンを見るPFスタディを実施する方法もあります。全般的な性格傾向を理解するならロールシャッハテストをする方法もあるでしょう。
これまでの経験を見てみると、自尊心が低い人、人前だと赤くなるのではないかと思って緊張する人、失敗経験を思い出す人、感情を刺激される状況が苦手な人、上記の発達障害による認知の偏っている人など、対人恐怖になるには様々な理由があります。
さらに、ご自身で感じる重症度と投影法などで出てくる無意識的な重症度が大きく異なる場合、介入方法が異なります。比較的軽い場合には対人恐怖の認知行動療法(CBT)をすることで問題が解決しますが、自覚なく重症度が高い場合には対人恐怖のCBTを実施しても改善がしないことがあります。
原因を明確にすることで、どのような介入が適切かの治療方法を選択できます。
まとめ
テストバッテリーとは複数の心理検査を実施しており、その意味を病名と心理カウンセリングの例で示させていただきました。
次回はテストバッテリーの重要なところ、メリット・デメリットについてまとめたいと思います。
話をするだけでなく、複数の心理検査を実施した方が良いと思っているカウセリングルームいちごでした。